ブランド情報 時間:2023年3月20日
唯一無二のデカ圧、パネライの時計
パネライは軍用向けにさまざまな精密機器を製造しており、その縁で潜水用時計の開発が始まりました。そのため、基本的には耐久性や防水性を重視したコレクションを多く発売しており、他のブランドにはない特徴的なモデルがたくさんあります。しかし、そうしたパネライ独特のコレクションに魅力を感じているユーザーも多く、腕時計が高値で取引されているのも事実です。パネライは、他のブランドにはない独特の魅力を持つ高級時計メーカーとしての地位を築いています。しかし、ロレックスやオメガなどに比べると知名度が高いとはいい難く、パネライというブランド名を初めて聞くという人もいるのではないでしょうか。
パネライという名前は通称で、正式名称は「オフィチーネ・パネライ」といいます。もともとは「G.Panerai & Figlio」という社名でしたが、1972年にディノ・ゼイが4代目社長へ就任した際に、社名を変更しました。現在ではジュエリーやファッションブランドなども運営するリシュモングループの傘下に入っています。パネライの特徴は高級腕時計ブランドであるにもかかわらず、腕時計やクロノメーター以外の機器も生産していることです。例えば、温度計や湿度計、気圧計といった機器も製造しています。また、創業当初からイタリア海軍と強い結び付きがあったことから、潜水用の装備品メーカーとして携行深度計や潜水灯を生産しているのも特徴です。
1930年代のイタリアには、自国を防衛するために「ブラックシール」と呼ばれる特殊部隊が存在しており、水深10m地点を低速魚雷に乗って進み、敵艦を爆破する役割を負っていました。
気象条件や時間帯にもよりますが、水深10メートルの世界は暗闇に包まれることも多くあり、普通の時計では味方と連携するための正確な時刻を知ることが困難でした。そこで注目されたのが、パネライが開発した夜光塗料のラジオミールです。暗闇でも光る夜光塗料なら、水深10メートルの場所でも正確な時間がわかり、味方と連携した行動が可能になります。
もともとイタリア海軍と協力関係だったこともあり、パネライがその特殊部隊用の時計製作を任されました。それまでパネライが納品した機器への信頼性が高かったからこそ、イタリア海軍は兵士の命を守る時計という重要なアイテムを発注したといえるでしょう。その高い技術力は現代でも健在で、世界中の腕時計愛好家からも信頼されるブランドとなっています。
パネライはもともと軍用の腕時計を製造していたこともあり、耐久性を追い求めていました。そのため、必然的に重厚感を感じさせるデザインとなっています。そうしたパネライの腕時計がトレンドになったのが、1990年代に入ってから始まった「デカ厚時計ブーム」でしょう。それまで、大きなケースデザインは敬遠される傾向にありましたが、軍用だったパネライの時計は強い男性をイメージさせ、デカ厚時計ブームの火付け役になったといわれています。実際にパネライのケースは47mmが一般的で、最も小さいサイズでも40mmです。もともとはイタリア海軍が使用する際に高い視認性と堅牢性が必要だったためにこのサイズになっていたわけですが、その頑丈さをイメージさせるデザインは多くのユーザーから支持されました。現在でも一目でパネライの腕時計だとわかるボリュームのあるデザインは、デカ厚時計好きのユーザーから熱烈に支持されています。
パネライは高級時計ブランドの一つではありますが、蛍光塗料メーカーとしても有名です。前述したように、特殊潜水部隊が行う任務では、暗闇でも光る蓄光塗料が必要不可欠でした。
しかし、当初使用していたラジオミールは、放射性物質が含まれていたことから徐々に使用されなくなります。ラジオミールに代わって台頭したのがルミノールコピーですが、それを開発したのもパネライです。また、暗闇での視認性をより高めるために、パネライ独自の「サンドイッチ文字盤」を使用したモデルがあるのも特徴です。サンドイッチ文字盤では下層ディスクに蓄光塗料を塗布し、その上にインデックスや数字をくりぬいたディスクを重ねる方法を用いています。その方法によって、これまで以上に多くの蓄光塗料を塗布でき、暗闇での視認性が大きく向上しました。パネライが製造する腕時計は発光力でも他社に抜きん出ており、実用面でも評価されています。
戦うために生まれた時計ということもあり経緯も見た目も無骨で男らしさが強い印象だが、重厚感から生まれる力強さとデザインのクラシカルさを両立させたラジオミールは他の時計では味わえない魅力がある。
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